最も有名なクラシックの様式はソナタ形式ですが、それの基になったロンド形式も忘れてはなりません。
シンプルな構成の中に音楽的な要素がたくさん詰め込むことができます。
今回はそのロンド形式の名曲を聴きながら、その特徴をわかりやすく解説していきたいと思います。
目次
概要
ロンド形式とは?
主に、多楽章の交響曲や協奏曲の最終楽章に使われました。
テーマとなる主題部分が、「エピソード」と呼ばれる挿入部分をはさみ、また主題へと戻ってくるパターン(回旋)を何度か繰り返す楽曲形式のことです。
何度も戻ってくる主題を聴かせるのにはとても理にかなった形式ですが、大掛かりなエンディングや展開が多い現代からみると、かなりわかりやすい形式に見えるものもあります。
音楽の発展過程を研究する上で、とても勉強になる形式ですね!
大ロンド形式
A | B | A | C | A | B | A |
主題 | エピソード① | 主題 | エピソード② | 主題 | エピソード① | 主題 |
小ロンド形式
A | B | A | C | A |
主題 | エピソード① | 主題 | エピソード② | 主題 |
古典的なロンド形式
A | B | A | C | A | D | A |
主題 | エピソード① | 主題 | エピソード② | 主題 | エピソード③ | 主題 |
ロンド形式は、ソナタ形式へ進化する
古典的な初期の大ロンド形式は、「A-B-A-C-A-D-A」と、主題の間のエピソードは全て違うエピソードが入っていました。そのうち、DにBを繰り返すようになり「A-B-A-C-A-B-A」へとまとまってゆきます。
そうすると、「A-B-A」「C」「A-B-A」と機能的に3つの部分に分けることができます。
そしてそれぞれが、「A-B-A(提示部)」「C(展開部)」「A-B-A(再現部)」となります。
そして、提示部の「エピソードB」を平行調や属調等で、再現部の「エピソードB」を主調、同主調で作るようになりました(ロンドソナタ形式)。
その後、「エピソードB」の後に主題に戻ることのない、「A-B(提示部)」「C(展開部)」「A-B(再現部)」というソナタ形式へと進化していくこととなりました。
大ロンド形式
A | B | A | C | A | B | A |
主題 | エピソード① | 主題 | エピソード② | 主題 | エピソード① | 主題 |
ロンドソナタ形式
提示部 | 展開部 | 再現部 | ||||
A | B | A | C | A | B | A |
主題 | エピソード① | 主題 | エピソード② | 主題 | エピソード① | 主題 |
主調 | 平行調、属調等 | 主調 | 主調 | 主調、同主調 | 主調 |
ソナタ形式
提示部 | 展開部 | 再現部 | ||
A | B | C | A | B |
第1主題 | 第2主題 | 展開部 | 第1主題 | 第2主題 |
主調 | 平行調、属調等 | 主調 | 主調、同主調 |
ロンド形式を、実際の楽曲で確認してみよう!
それでは、実際のロンド形式を楽曲を聴きながら解説をしていきます。
ロンド形式でも、最もわかりやすい小ロンド形式を使って説明していきますね。
ピアノソナタ第8番 ハ短調「悲愴」第2楽章/ベートーヴェン
「悲愴」は、「月光」「熱情」と並ぶ、ベートーヴェンの3大ピアノソナタの1つです。
特にこの第2楽章は人気が高く、ベートーヴェンの楽曲の中でもトップクラスの知名度です。
下の各パートの構成表に、上の楽曲データに対応した秒数を記載しましたので、照らし合わせながら聞いてみてくださいね。
パート | 対象秒数 | 小節 | |
A | 主題 | 0:00~ | |
B | エピソード① | 1:02~ | |
A | 主題 | 1:51~ | |
C | エピソード② | 2:23~ | |
A | 主題 | 3:10~ |
主題 0:00~
いきなり主題から始まります。ゆったりとしたメロディがとても気持ちよくて印象的ですね。
エピソード① 1:02~
主題の流れを引き継ぎ優しく展開します。まだ前半ということで、まだ大きな展開や期待を裏切る展開などはありません。
主題 1:51~
そしてまたひっそりと優しく主題に戻ってきます。この静けさは、エピソード②の変化を予想させるようです。
エピソード② 2:23~
ここで大きく曲が展開します。3連符主体のリズムに乗って、感情を大きく吐き出すかのようにクライマックスの到来を予感させます。
主題 3:10~
エピソード②で変化した3連符のリズムを引き継ぎ、主題へと戻ってきます。美しいメロディに3連符が切ないほどにマッチし、憂いの中曲が終焉に向かいます。
第二楽章として、とてもふさわしいゆったりとした音楽構成がすばらしいですね。
「エリーゼのために」 イ短調 WoO.59/ベートーヴェン
誰もが一度は聞いたことがあるメロディですね。名曲です。
壮年期のベートーヴェンが、愛する女性に送ったとされる恋心に満ち溢れたロマンティックな作品です。
実はこの曲も小ロンド形式で作られています。
パート | 対象秒数 | 小節 | |
A | 主題 | 0:00~ | |
B | エピソード① | 0:57~ | |
A | 主題 | 1:23~ | |
C | エピソード② | 1:53~ | |
A | 主題 | 2:22~ |
主題 0:00~
冒頭からミレ#~の繰り返しではじまる印象的な主題です。とてもロマンティックですね。
エピソード① 0:57~
ここから突然華やかなメジャーになります。恋の楽しい気持ちが踊るようです。
主題 1:23~
エピソードの明るさから比べると、また切ない想いを募るような気持ちに戻ったようです。
エピソード② 1:53~
ここはマイナーのまま展開していきます。エピソード1とは真逆の展開ですね。楽しい時期も辛い時期も全て合わせて1つの恋であるといわんばかりの展開です。
主題 2:22~
そして、また主題に戻ってきます。この時代の音楽にしてはかなり短い構成となっています。「バガテル」とついているだけあって、楽曲スケール的にはスケッチ感が残る作品に感じます。
ロンド形式から学べること
ロンド形式は、説明したとおり主題の間に「エピソード」と呼ばれる間奏のような部分が入ります。
そして、エピソードは全て別のパターンながらすべて主題に戻ってゆきます。
ということは、どんなに楽曲が展開しても、主題、現代風に言うとサビに戻るアプローチの勉強になります。
作曲を志す皆さんも、この曲はどうやって展開させようか、、、もしくは展開させた配意けどどうやってサビに戻そうか、、、なんて悩んだ位事があるかもしれません。
ロンド形式では、同じサビに何度も何度も戻ってくるので、楽曲の展開と再現の引き出しとしてとても参考になります。
曲の展開に疲れたときは、そっとロンド形式の楽曲を聴けば、いろんなアイデアが生まれるかも知れません、
先人の知恵は偉大ですね。
ロンド形式の有名な楽曲
大ロンド形式
管弦楽
- バレエ音楽「くるみ割り人形」より「行進曲」/チャイコフスキー
- アイネ・クライネ・ナハトムジーク 第4楽章/モーツァルト
- 劇付随音楽「夏の夜の夢」より「結婚行進曲」/メンデルスゾーン
- 交響曲 第5番 嬰ハ短調 第5楽章/マーラー
ピアノソロ
- 幻想小曲集 Op.12 第2曲「飛翔」 へ短調/シューマン
小ロンド形式
管弦楽
- バレエ音楽「くるみ割り人形」より「葦笛の踊り」/チャイコフスキー
- 交響曲 第5番 嬰ハ短調 第1楽章/マーラー
ピアノソロ
- バガテル「エリーゼのために」 イ短調 WoO.59/ベートーヴェン
- ピアノソナタ第8番 ハ短調 Op.13「悲愴」第2楽章/ベートーヴェン
- バガテル「エリーゼのために」 イ短調 WoO.59/ベートーヴェン
- マズルカ 第5番 変ロ長調/ショパン
- 亡き王女のためのパヴァーヌ/ラヴェル
ロンド形式(古典的)
- パルティータ 第2番 ハ短調 BWV826 第5曲「ロンドー」/J・S・バッハ
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