楽曲でなぞると超わかりやすい、「ソナタ形式」の解説

ソナタ形式って、名前は何度もよく聞きますが、それを説明できる人はなかなかいません。

クラシックに難しいイメージを与えているのは、この「ソナタ」や「ソナタ形式」という言葉かもしれませんね。

ここでは、ソナタ形式の名曲を聴きながら、その特徴をわかりやすく解説をしていきたいと思います。

概要

ソナタ形式とは?

バッハの死後の時代、古典派の時代にソナタ形式といわれる音楽スタイルが確立しました。

これは交響曲やソナタの主要な楽章(主に第一楽章)にも頻繁に用いられ、今日にも影響を与える音楽の重要な形式です。

「ソナタ形式」とは「ピアノソナタ」や「ヴァイオリンソナタ」に使われる「ソナタ」と少し意味が違います。

前者「ソナタ形式」は1曲そのものの楽曲形態を示すものに対し、後者「ソナタ」は複数ある楽章の総称です。

今回の解説は「ソナタ形式」の方です。

それでは、さっそくソナタ形式の解説をしていきます。

ソナタ形式の楽曲は、1曲のうち、主に次の3つの部分から成り立っています。

  1. 提示部(Exposition)
  2. 展開部(Durchführung)
  3. 再現部(Reprise)

大規模なソナタ形式になると、この前後に「序奏」「コデッタ」「結尾部(コーダ)」等が追加されたりすることがあります。

「序奏」には、主題にそったものから、主題とは全く関係の無い部分を入れたりさまざまです。

また、提示部の第2主題は、平行調や属調になることが多く、それが再現部では、主調や同主調になります。

図でまとめると、下記のようになります。

ソナタ形式の種類

小~中規模なソナタ形式

提示部 展開部  再現部
第1主題 第2主題 第1主題 第2主題
主調 平行調、属調等 さまざまな調  主調 主調、同主調

大規模なソナタ形式

序奏 提示部 展開部  再現部 結尾部
(coda)
第1主題 第2主題 第1主題 第2主題
主調 主調 平行調、属調等 さまざまな調   主調 主調、同主調

言葉で表現するとかなり難しく、よりクラシックをとっつきにくいものにしてしまいそうですが、内容がわかれば簡単です。

実際の楽曲を使ってそれぞれの部分を見ていきましょう!!

ソナタ形式を、実際の楽曲で確認してみよう!

 ピアノソナタ第8番『悲愴』第1楽章 ベートーヴェン

「悲愴」は、「月光」「熱情」と並ぶ、ベートーヴェンの3大ピアノソナタの1つです。

ベートーヴェンの若かりし頃にできた傑作を、各パートごとに解説していきます。

下の各パートの構成表に、上の楽曲データに対応した秒数を記載しましたので、照らし合わせながら聞いてみてくださいね。

パート 対象秒数 小節
序奏 0:00~ 第1~10小節(10)
提示部 第1主題 1:32~ 第11~50小節(40)
第2主題 2:03~ 第51~112小節(62)
コデッタ 3:18~ 第133~136小節(4)
展開部 3:52~ 第137~194小節(58)
再現部 第1主題 4:37~ 第195~220小節(26)
第2主題 4:59~ 第221~276小節(56)
結尾部(コーダ) 6:07~ 第295~310小節(16)

序章 0:00~

かなりゆったりとしたテンポで始まる序章ですが、1分半以上も有り、当時としては斬新な試みとして存在感を示しています。

「悲愴」というタイトルから、もの悲しいイメージもしますが、冒頭のフォルテピアノからちょっとした悲しみではないという、ベートーヴェンの強い意志を感じます。

そういう意味では、見事な序章の役割を果たしていますね。

提示部

第1主題 1:32~

主題を提示するパート。まず第一主題が奏でられます。

「第一主題」というと難解ですが、その楽曲を構成するもっとも重要なフレーズのことです。比較的覚えやすい部分なので、現代で言う「サビ」に近いですが、そのサビを使ってもっと音楽的に構成するイメージですね。

第2二主題 2:03~

その後に第二主題が奏でられますが、ここでよく属調(キーがCで言えばF)に転調されることが多いです。(譜面的にはリディアンスケールっぽく記載されますが、転調しているのでもちろんリディアンではありません)

コデッタ 3:18~

提示部の結びに序章のフレーズを戻して、前半の結びを感じさせます。

展開部 3:52~

提示分で奏でた主題が、展開されていくというパートです。

理論書で「主題や動機的な要素を用いて、主題操作を行う」等と説明される事が多いですが、まったく何のことかわかりませんね笑

主題を感じさせるフレーズを用いたり、もしくは主題に何か足したり、主題のキーやハーモニーを変えたりして曲を音楽的にかっこよく展開させたパートです。

音楽に緊張感を持たせたり、もしくは少し難解にして、この後に戻ってくる再現部をより鮮やかに彩る事ができるよう、提示部とは逆のベクトルに向かうパートであるといえます。現代の音楽で言うと「Aメロ」や「Bメロ」、もしくは「間奏」的なイメージですが、ここをあまり印象的にしすぎると「サビ」のパンチがなくなりますよね。

なので理想的な展開部は、技巧的でカッコいいけれども、少し覚えにくいイメージかなと思っています。

ここは作曲家のこだわりや音楽性の高さを誇示できるとても楽しいパートです。

再現部

第1主題 4:37~

提示部で奏でたフレーズが、再度奏でられるパートです。

展開部でくずした主題の形が、このパートでまた戻ってきます。一度聴いたことがあるメロディが再現されるので、とてもドラマティックに感じます。

ここを鮮やかに聞かせることができるかがソナタ形式の見せ場ですね。

第2主題 4:59~

提示部で示された第二主題は、主に属調など少し緊張感のある展開で奏でられましたが、この再現部では同じキーで奏でられることが多いです。緊張感ではなく「解決感」を感じさせることがこのソナタ形式のもっとも肝となるところと言えるかもしれません。

また、再現部の最後にコーダに移行し、一ひねり加えて楽曲が終わるものもあります。

このように、一つの「主題」を音楽的に手間隙をかけて一つの楽曲にするのが、ソナタ形式の醍醐味ですね。

結尾部(coda) 6:07~

コデッタのように、序奏のフレーズを持ってきて楽曲の終焉を示唆しています。

そして印象的な第一主題へと展開し、強いアタックで曲を締めているのがとても印象です。

ソナタ形式から学べる作曲のテクニック

ソナタ形式は、現代と同じく「第1主題」をいかに鮮やかに聞かせることができるかと言うことだと思います。

作曲家が、2つの主題を展開部などでどのように音楽的に料理しているかを考えるのがとても楽しいですね!

ですがこの時代の楽曲は、現代の楽曲より複雑すぎるので、原型がわかりにくいほどの主題の料理の仕方もしばしばです。

何度も何度も聞き込むと、ふとした瞬間に主題のイメージがいたるところで楽曲にちりばめられています。

壮大な映画のように、聴けば聞くほど新しい発見があるクラシックの楽曲は、作曲家がパズルのようにわれわれに作曲や編曲のヒントを与えてくれいます。

ソナタ形式の有名な楽曲

  • ピアノソナタ第8番『悲愴』第1楽章 / ベートーヴェン
  • ピアノソナタ第14番『月光』第3楽章 / ベートーヴェン
  • ピアノソナタ ハ長調 K. 545 / モーツァルト
  • etc…