「技術は自分で盗め」という指導法の賛否!1~10まで丁寧に教えた新人は使えない?

「仕事は見て盗め」という指導法が、巷でよく上司と部下間でバトルされていますよね。

学校や仕事場、テレビなどでも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

世代間で行われるこの育成論は、永遠の課題と言っても良いかもしれません。

上司と部下の隔たり

図式としてはこんな感じです。

新人=仕事に必要なものは、上司が1から順序だてて全て教えてほしい!仕事で失敗しないためには、上司が手取り足取り全部教えるべきだ。
上司=自分の成長に必要な技術は、自主的に上司から盗んでこい。盗める努力があってこそ人は成長するのだから、最初からすべてを教えるつもりはない。

みなさんも周りでこんな意見を持っている人はいるのではないでしょうか?

あっ、1つだけ最初にお断りしておきます!

「これは業種によるよね」という意見も必ず1人は言い出しますが、議論の筋と離れてしまうのでこの意見はナシでお願いします笑

業種云々の話ではなく、仕事をする姿勢の話なのでこう言われるともう話が終わっちゃうので涙

すみません、話に戻ります。

新人(部下)の主張

まずは、新人(部下)側の主張を見てみましょう。

まず前提として、1から全部教えて行く指導法は、もちろん決して悪い方法ではありません。

まずは基礎をしっかりさせてからでないと、人は成長しにくいので理にかなっています。

しかも教える側も、自分が培った知識を1から順序だてて教えていくと、結果的に上司にとってもよい復習になるとも言えます。

ですが、、、

1から順序だてて教えていっても、しっかりと数年後にエース級の戦力として仕事できるでしょうか?

また、その新人がいずれ指導する立場になった時、ちゃんと指導できるでしょうか?

これは私の経験からの意見ですが、新人が本当の意味で成長するのは、その人が大事なことに「気づく」時だけです。

自分で考え、何かに「気づく」時にだけ、人はものすごくたくさんのことを理解できるのです。

1から教えていくということは、その大事な「気づく」機会を奪ってしまう危険が高いということなのですね。

しかも、教えてもらう側はまだまだ経験がないので、「なりたい自分」や「具体的な目標」というものが、まだ何も見つかっていません。

目標が無い人に指導してもたくさんのことは心に響きません。

おそらく吸収率で言うと10%も無いのではないでしょうか。

新人さんや生徒さんの中には「お金払ったんだから一通り教えてくださいよ。」という姿勢で来られる方もいますが、もしこちらが対価をもらっていたら、その方が望む基本からケーススタディまでキッチリ教えるのもやぶさかではありません。

でも、そういった指導をしても、まず私を超えていけることは無いと思います。

なぜなら、自分の技術なんて100%の経験をどんなに時間をかけて講義しても、伝えることができるのはせいぜい30%程度です。

そしてそれを生徒ががんばって80%吸収できたとしても、わずか24%程度にしかなりません。

なので、1から全て教えようとすることの無駄さは上司自身がわかっています。

どんな仕事でも答えが無限にあので、全てケーススタディのように教えるのは基本的に不可能なのです。

このような話をしても、「気づき」を体験したことがない人間、やはり「1~10まで教えてくれないなら、完璧な仕事ができるはずがないじゃないか!失敗してしまうよ?」と何度も反論してきます。

よく”完璧”という言葉を使いますね。

私がそう言われたら、

じゃあ、君に1~10まで手取り足取り教えたら、完璧な仕事をしてくれるの?

こういうと誰も反論してきません。

上司の主張

では次に、上司側の意見を見ていきましょう。

「必要な知識は目で盗め」と言われると、なんだか何も教えない、冷たいやり方に感じる新人もいるでしょう。

右も左もわからないのに、一体何を盗めというんだよ!とう意見は実に様々なところで話は出ます。

では、師匠は本当にただ冷たく、指導するつもりがないのでしょうか?

決してそんな事はありません。

早く仕事ができるようになってほしいから、最初からすべて教えないのです。

上司が考えていることはたった一つだけです。

先述のように、いろんなことの「気づき」ができる機会をプレゼントしているのです。

でも、やっぱり教えてくれないから失敗するじゃないか!って言うかもしれませんが、、、安心してください、こちらも、新人が完璧な仕事ができるなんて誰一人期待していません

だから、まだ完璧な仕事を期待されていない新人の時代に、たくさん考え、失敗し、経験してほしいのです。

こう話しても、「だから、失敗するから絶対教えてもらわないとダメでしょ」という人が多いこと、、、

大丈夫です。

遠慮なく失敗してください。

上司は、あなたには失敗をすることをちゃんと計算に入れて仕事を託しています。

全力で考え、全力で仕事に取り組んで、そして失敗してしまった結果は、何年後かは、きっとあなたにとって財産になります。

また、新人は仕事に意欲があれば、仕事に役立ちそうことや、初歩の技術的なことは何かしら調べているはずです。

仕事をしていて「こういったことがしたいけど、どうやったらわからない」となった時、新人がどのように動くか上司は期待して見ています。

中には、「目で盗め」と言われると「質問するな」と誤解をしている新人さんが多くて困ります。

「技術は自分で進んで手に入れろ」という意味なので、質問が来ると上司はとても嬉しいです。

つまるところ、、、

自分で必要なものを人から盗もうとできる人は、必ず「なりたい自分」があるからなんです。

なりたい自分があるので、強い積極性が発揮できるんですね。

教えてよっていう人は、「なりたい自分」がないから1から教えてほしいと受身になってしまうことが多いです。

理想を持って自発的に取り組む人と、言われたことだけこなす受身的な人の成長度の差は歴然です。

極端な話では、英語の仕事をしたい人と、試験があるからイヤイヤ英語を勉強している人の成長度の差は、月とスッポンでしょう。

しかも教える側としても、なりたい理想を持って来る人には、つい必要以上に時間を裂いて指導してしまいます。

がっぷり四つで新人が来てくれると、ついこちらも熱が入ってしまいます。

上司も何とか伝えたいとこちらも思うわけですね。

なので上司を本気にさせることができる新人は、それは1つの才能ではないかなと思います。

こういったことから、上司が本当に「育てたい」と思った人には1から10までキッチリと技術なんて教えません。

自発的な行動ガできる新人は、どんな人からも何かを吸収できます。

何もしなくてよい時間でも、何かすることを見つけて行動しています。

その気になったら、一番嫌いな人からでも反面教師として何かを盗めることでしょう。

まとめ

結果として、「技術は見て盗め」という指導法が合わない人は、どんな仕事でも、ソツなくこなすことはできても大成することはありません。

やはり、最初の数年は、全てを教えてもらった新人の方が少しは仕事の成果を出せるかもしれませんが、「気づく」事により手に入れた知識と技術のある新人は、5年後には完全に逆転しはるか大きな差がついていることと思います。

僕は、大成する可能性がある人に全力をかけて教えたいと思うので、その生徒が吸収しやすいように発言とか行動とか、たくさん布石をうって授業をしています。

現場に出た時「あぁ、そういう事か!」と思ってもらえたらすごく嬉しいですね。

私は、すべてを教えないことによって、最短距離で早く完璧な仕事ができる人材に育てようとしています。

時には意地悪をして、今だからできる「ちゃんと意味のある失敗をさせてあげる」ことが自分の根底にある指導法です。

なので、ひどい上司・講師だとは思わずついてきてくださいね笑

もし、1~10まで優しくて手取り足取り教えてくれて、失敗するチャンスを与えてくれない上司と巡り会ってしまったなら、あなたは不幸だと思っても良いくらいです。