個人的に大好きなエヴァンゲリオンのサウンド分析をしたいと思います。
エヴァの中でも、今回は「エヴァンゲリオン 新劇場版:序」を題材としました。
映像がないとうまく伝わりにくいのですが、ここにDVDを貼り付けるわけにも行かないので、youtubeとかでちょっと探してみますね。
後日更新してなんとか映像をみながら解説できるように作り変えます。
公開年:2007年
監督 :庵野秀明
音楽 :鷺巣詩郎
サウンド分析
主題歌について
アニメ版「残酷な天使のテーゼ/高橋洋子」
映画版「beautiful world/宇多田ヒカル」
主題歌ですが、あれだけの大ヒットし、エヴァの看板にもなった「残酷な天使のテーゼ」が映画版では変更になりました。
これは今回の映画のターゲット層が変わった事に起因していると思われます。
10代を中心にヒットした「残酷な天使のテーゼ」ですが、アニメ版は1995年に放映されたが、リメイクは2007年と12年も経っています。
ということは、当時テレビでアニメを見ていた10代のファンは、新劇場版が公開される時にはもう30歳前後になっています。
そのために、30歳前後に強い支持をされている宇多田ヒカルの起用になったのではないでしょうか。
エヴァの主題歌の位置づけ
エヴァンゲリオンの主題歌の位置づけで最も特徴的なことは、劇中に主題歌のアレンジが一切でてこないということです。完全に劇伴と主題歌を切り分けているんですね。
通常の映画とかでよく出てくるピアノアレンジも無ければ、もちろんオーケストラアレンジもありません。
しかし、この主題歌を物語と切り離す演出は最近はよくされており、ヒット曲を映画の中に取り入れないというこだわりが感じられ、映画の格式は上がっているように感じます。
主題歌は使わないというのも「演出」ですね。
どう使うかだけではなく、バッサリ切ることも立派な演出なのです。
アニメ版の方では、最終回の最後の最後で「残酷な天使のテーゼ」のアレンジが流れますね。あのいろいろと物議をかもしだした、物語とは関係ない拍手のシーンです。これは主題歌を使うことによって、エヴァの本編の物語とは違いますよ~と逆に訴えているように感じます。
こんな主題歌の使い方は、、、従来とは間逆ですね笑
でもこれはこれで見事な演出です。
ここは見てほしい!秀逸なサウンド演出箇所を解説
特に秀逸な演出がされているところをピックアップして分析して行きます。
今回は、シンジ君が第五の使徒と戦いに行くシーンを分析したいと思います。
手元にDVD等がある方は、映画のスタートから35分20秒あたりの第5の使徒が登場したところからみてくださいね。
まず、映画とみたことがない人の為にこのシーンを説明しておきます。
自分には絶対無理だと思いながらも何とか使徒を倒すことが出来た。
それでもやはり、「乗りたくて乗ってるわけではない。」という感情は変わらない。
そしてその出撃で使徒と街中で戦ったため、近くにいたクラスメイト鈴原トウジの妹がケガをして入院してしまう。
それに怒った兄のトウジがシンジを殴りかかり、シンジはエヴァに乗りたくないという感情がより強くなって行きます。
その「乗りたくない」という感情のまま、使徒が現われたのでまた戦わなくてはならない、、、
そして、戦いには勝ったものの、やはり乗りたくないという感情がエスカレートしてシンジ君が自暴自棄になっていく、、、
というシーンです。
早速みていきましょう!
シーン
戦闘形態に移行~シェルター
36:20~ 街の変形のSEが、武器より工業っぽいイメージ(詳細説明は後述)
38:35~ トイレのシーンで不自然な水滴音(これは地下を強調してる?)
エヴァ出撃
38:45~ エヴァ出撃、シンジは乗りたくない、出撃時の音楽が前向きすぎる(詳細説明は後述)
39:40~ 曲の編集をしてシーンに合わせてBGMの尺をあわせているのだが、効果音が大きくなった時に曲のつなぎ目を入れて目立たなくして見事につなぎ合わせている
使途反撃
40:00~ 一気にピンチ音楽へ。出撃時の前向きな曲が生きてよりピンチ感が強調されている。
シンジ反撃~戦闘後
41:55~ シンジが考えるシーンでは必ずピアノが使われる。これもライトモチーフの一種。
42:19~ 「逃げちゃダメ」と戦いに行っているのに、曲はますます緊張感が増す
43:14 戦闘で勝利したのに、ディミニッシュ系?のモヤモヤ感で終わる。
そしてその後、、、長い長い効果音のみの雨演出に入る。
最重要箇所解説
まず最初に、、、この35分20秒からのシーンで最高レベルの音楽演出がここで垣間見られます。
早速詳しく解説してきますね!
今回は、「乗りたくない、戦いたくない」という感情のままエヴァに乗って出撃したら、案の定大ピンチが訪れてしまうが、何とか最後は無事勝利を収めます。
通常は、戦いたくない思いからダークな戦闘曲から始まり、形勢が逆転した時から使徒を他の素までアツい曲が流れるのが通常の演出です。
ですが、今回のシーンに限っては、戦いに出たくない気持ちでスタートしながら、勝った後もシンジ君はより心が壊れていくところを表現しなければなりません。
ということは、、、通常のセオリー演出にはあいませんね。
最後が一番ダークにならなくてはなりませんね。
でも、ダークになっていくという表現をしようとすると、最初からダークのままでは感情の移り変わりが表現できません。
多少なりともダークとは逆の、明るさを持った部分が必ず必要となります。
ジェットコースターのように下っていくには、最初は頂上がないと下りようがないというわけです。
となると、、、心をふさぐ原因となる戦闘の最初にダークとは逆の明るさのある音楽を入れなければならないのです。
でも、「エヴァなんか乗りたくない」という気持ちがあるので明るい音楽は合うのでしょうか?
もちろん、合いません!
でも、その明るい演出がシーンに合うように映画が全体として演出がされているのです。
このシーンの直前をみてください。
シンジのもう1人のクラスメイトのケンスケが軍事マニアで、トウジに使徒を一緒に見に行こうとワクワクしながら話しをします。
このシーンが重要なのですね。
この後にシンジ君の神妙な顔がアップになり「乗りたくない。戦いたくない。」ということが強調されます。14歳の子供ですから、正直の本当にイヤだったんでしょうね。
そして、エヴァが出撃します!!
この時になんと、、、「よっしゃ行くぞ!」的な明るい曲がかかります。
えええええええええええええ!
なんでここでこんな曲が!!と一瞬思いました。
普通はありえません。得体の知れない使徒も一緒に画面に現われるので、シーンには全く合いません!
と思った瞬間!
先程説明した軍事マニアケンスケが「まってましたぁ~~」と不自然なくらいはしゃぎだします。
このケンスケのはしゃぎによって、シンジ君の暗い心と裏腹に、この違和感のある曲がシーンに合うように感じてしまうのですね!
なんという見事な計算された演出でしょう!
ケンスケが名脇役振りを発揮して、この本来ありえない明るい曲がシーン演出として成立しています。
この間、実に15秒。この15秒は、映画の演出としてとても重要な違和感のある15秒なんですね。
その後その明るい曲がしばらく鳴り続けるのですが、使徒の反撃から一気にピンチ曲が流れ始めて一気に悲壮感が広がります。
ここで先程の明るい曲との対比が見事に生きていますね。
そしてその後、「逃げちゃダメだ」の名フレーズで一瞬ピアノ曲がなり、シンジ君が反撃を開始します。(このピアノは、シンジ君が考えるシーンでは度々ピアノが使われているのでシンジ君の心の葛藤のライトモチーフともいえるものでしょうか。)
しかし、大ピンチには変わりません。「逃げちゃダメだ」と取り付かれたように戦うシンジに合わせ、ピンチ曲からよりよりピンチなダークな曲へと変わり、使徒殲滅したシーンではディミニッシュ系の地に足のつかないようなコードでモヤモヤしながら戦闘が終わります。
このモヤモヤが見事にシンジ君の心にマッチしていますね。
このあと「どうでもいいや、、、」というセリフとともに、シンジくんの心が坂道を転げ落ち、心を固く閉ざしてしまう重要なシーンへと繋がっていくのですね。
もし、このシーンが最初からずっ~~~と重い曲だったら、このシンジ君が心を閉ざしてゆくシーンはそれほど印象的にはならなかったでしょう。
この坂道を下っていく重い様子を表現するために、出撃時の違和感のあるあの明るい楽曲が大きな意味を持ってくるのです。
「出撃前の戦闘に出たくない感情 <戦闘をしてより心をふさぐ」という構図があるので、大胆な演出に打って出たのですね。
このように、違和感があるところには必ず意図的な演出があります!
これは鉄則です!
効果音について
効果音にも特筆すべき演出が隠されています。
エヴァンゲリオンの効果音でもっとも表現しなくてはならないのが、使徒の効果音です。
これもかなりおもしろい方法で、いかに使徒が得体の知らないものか、いかに現実離れしているものかを表現しています。
重要箇所解説
自衛隊と使徒のバトル
映画の2:05あたりに、使徒が自衛隊のヘリを切って、ヘリが墜落するシーンがあります。
自衛隊のヘリが落ちていく時に、金属をひっぺがエすようなギィィィ~という効果音がついています。
ものすごく違和感です、、、
これも違和感のあるところには演出があるという法則にしたがって解説します。
まずポイントですが、この直後、使徒が光りそこで実世界では絶対に鳴らないような人間の声を加工して作ったような効果音が鳴ります。
まずそこをふまえて説明しますね!
このシーンはかなり遠いところからのアングルなので、自衛隊のヘリが落ちる時には、本来はほぼプロペラの音くらいの小さな音しかしないはずです。
ですが、ここにあえて音を入れています。しかも我々が日常でも聞いたことがある「耳になじみのある」金属の音です。
その直後に、使徒のジャンプする時に人得体の知れない効果音が鳴ります。
ということは、この使徒の効果音をより非日常のものとして表現したかったので、あえて直前に耳になじみのある音を入れたのですね。
この音が入ることによって、日常的なイメージを擦り付けられた直前の音が、より使徒の効果音が際立たせているのです。
それと同時に、自衛隊が我々日常側であるということも強調できますね。
この他にも、機械が動くシーンや街が変更するシーンなどでも工場のような音を混ぜたりしてより日常っぽく仕上げています。
こうすることによって、一番重要な使徒の効果音を引き立たせているのですね。
日常と非日常の見事な線引きです。
この他にも書くことはたくさんあるのですが、ここは折をみて追記して行きます。