コード進行分析/はじまりはいつも雨

ASKAの名曲「はじまりはいつも雨」のコード分析です。

1991年の発売以来、何十年経っても色あせない名曲ですね。やはりASKAの声は甘くあまりにも個性的でありながらも、優しく耳に届きます。

恋人に向けた甘い言葉と、その言葉を彩る甘い響きの謎に迫って行きたいと思います。

Aメロ

Db Db Ebm7 onAb Ebm7 onAb
Ⅱm7 onⅤ Ⅱm7 onⅤ
 Db Db Ebm7 onAb Ebm7 onAb
Ⅱm7 onⅤ Ⅱm7 onⅤ

まずはAメロです。雨をテーマにした楽曲の入口ですね。

雨をきっかけに繋がる甘いラブソングの世界観を見事に伝える歌詞が印象的です。

まるで映画のように、優しい雨の光景が浮かび上がります。

Bメロ

 Gb6 F7 Ebm Fm7
 Ⅳ6 Ⅲ7 Ⅱm Ⅲm7
 Gb6 F7 Bbm / F7 Bb
 Ⅳ6 Ⅲ7 Ⅵm / Ⅲ7

ここから、一気にサウンドでも響きが甘くなります。Bメロ頭の「Gb6」の6度がメロディになっていて、この響きがとても恋愛的な甘さを引き出していますね。

恋愛中の二人を示すにはこれ以上ないと言ってもいいくらいのコードです。

そしてBメロ6小節目の「F7」は、一時転調してそのままドミナントとして「Bb」に解決して、Bbメジャーに転調して終わっていますね。

少し暗くなっていたBメロ後半が突然明るい響きに変わります。まるで雨が一瞬やんだかのように。

アレンジも音数が減るのでこの明るさが強調されます。

そして、次のAメロから短3度上のDbメジャーに戻ります。

この短3度の転調は間奏でも使われているので、ここが布石となっているのかもしれませんね。

Aメロ(2回目)

コードは1回目と同じなので割愛しますが、Bメロ終わりの「Bb」から突然「Db」に戻ってくるのが気持ちいいですね。

Bメロ(2回目)

Gb6 F7 Bbm / Cm Bbm / Ebm7(b5)
Ⅳ6 Ⅲ7 Ⅵm / Ⅶm Ⅵm / Ⅱm7(b5)
Db Ebm7 onAb
Ⅱm7 onⅤ

2回聞いてもGb6の甘い響きが優しいですね。

2回目は、さらにその甘さが「Bbm / Cm – Bbm / Ebm7(b5)」の部分で引き立ちます。

特に「Ebm7(b5)」のところでハーフディミニッシュのとろけるような響きに、歌詞も「~かい?」と問いかけとなっているので、、、これは響きと歌詞が一体となった秀逸な表現ですね。

ここは素敵過ぎます。

しかも「Ebm7(b5)」はDbマイナーからの借用なので、Dbマイナーに転調するかと思いきや、Dbメジャーにやっぱり戻ってくるのでここでぐっと明るくなりサビへ繋がっていく推進力となるのですね。

雨雲を突き抜けていくように、サビに向けて右肩上がりの勢いが加速して行きます行きます。

サビ

Db Fm7 Bbm Ebm7(b5)
Ⅲm7 Ⅵm Ⅱm7(b5)
Db / Eb Gbm6 / Db Gb / Gbm Db
Ⅰ / Ⅱ Ⅳm6 / Ⅰ Ⅳ / Ⅳm

サビは集大成のようですね。

2回目のBメロ後半の「Ebm7(b5)」や「Gbm6」の6度の響きなどをもう一度サビに使うことによって楽曲としての統一感が強くなっています。

サビ7小節目の「Gb / Gbm」のサブドミナントマイナーが入ってくるところなんて、夢に入っていくかのように甘い終止になっていますね。

しかもドミナントにいかずサブドミナントから終わっているのでものすごく優しい終わり方となっています。

二人夢の世界へ、、、と言わんばかりの世界観ですね。

2番終わりの間奏

A D E / D A / E7
Aメジャーに転調
C F G / F Ebm7 onAb
Cメジャーに転調

ここの転調がすばらしすぎますね!

メロディのDb音を3度にして、「A」のコードからAメジャーに転調します。またその4小節後、「E7」を架け橋としてCメジャーに転調します。

これらはよくあるパターンではありますね。

でも、このAからCへの短3度の転調は、BメロからA’メロに戻る際の短3度の転調の布石が活きているからよりこの間奏が曲想にマッチしているんでしょうね。

そして、間奏で特筆するところは間奏7小節目からです。

「G」から「F」へ下っていき、その下った勢いのままつないだ「Ebm7 onA」の響きがかっこ良すぎるんです。

このコードになると、マイナーコードでありながらとても明るく転調先の「Dbメジャー」を指し示すかのように存在感を示します。

Dbメジャーというと元のキーですね!そのドミナントとして機能し、自然とサビの「Db」に繋げてくれます。

これはもうセンスとしか言いようがありません。

 Gb6F7EbmFm7