音楽で使われる「コード」の正体とは? 

誰も答えることができない、コードの正体

音楽を目指している人や、音楽で仕事をしている人に「コードの正体って何でしょう?」と聞いた時、誰一人として正解が返ってくることはありませんでした。

いろんなところで授業をしていますが、1000人に聞いて誰一人です。

多かった答えとして、「クラシックの体系化」「メロディーの通り道」「曲構成の元になる」「和音をつなげたもの」とか、、、そういった間違った答えが大半でした。

答えはもっとシンプルで、難しいものなんです。

コードとは、

「音の響きに名前を付けたもの」

です。

ピンと来ない方も多いですね!それでは解説しましょう!

たとえばCm7のように、「○m7」とかと書かれると大体の和音のイメージはつくと思います。また「Fdim」でも大体の響きのイメージは出来ますよね。

こういう明るいとか悲しいとかといった和音の響きを体系化し、「目に見えない」はずの響きに名前をつけたという画期的な技法なのですね。

そして、それらの響きを有機的に繋いでいったものを「コード進行」と呼びます。

なので「コード」と「コード進行」別物です。

われわれが「Cm」とかというのは、「コード」ではなくて、「コードネーム」が正しいのかもしれません。

コードの歴史

コードの歴史を深くたどれば、17~18世紀のバロック時代にたどり着きます。

そのバロック時代に存在した「通奏低音」が、現代のコードに最も近い音楽理論にあたると思います。

これは、楽譜にベースとその和音の番号を書いて、和音自体は演奏者のセンスに任せられるというシステムです。

現代のコードネームの使い方とかなり近いですね。「Am」と書かれてあったら、ベース音と和音構成はすぐにわかります。

ですが、通想低音は演奏家のセンスに任せるということは、、、

作曲家の意図する音楽にはならない

ということです。

なのでこの通奏低音は18世紀以降は使われなくなってゆきます。

そして、それから100年ほどたって、また同じように体系化された手法が、20世紀になって登場します。

ジャズのように即興で演奏するジャンルでは、音楽の共通言語のように、意思疎通をする手段が必要でした。

そして「コード」という概念が生まれました。

コードの歴史は、誕生から実はまだ100年程度の若い音楽理論なんですね。

その場での即興演奏を主体とするジャズというジャンルでは、一目で楽曲の法則を理解できるコードという方法がとてもマッチしました。

楽譜にコード進行だけでも書いてあれば、とりあえずは演奏はできますよね。

それほど「コード」という概念は優秀なシステムなのです。

しかし、歴史は繰り返します。

”作曲家優位”の楽曲制作の時代か、”演奏家優位”の時代かによって使われる手法も変わります。

現代のようにジャズが高い地位にある現代では演奏家が優位であり、コードという手法はとても有用です。

ですがこのコードは万能ではありません、

1つの完成された音楽作品として記録に残すにはあまりにも答えがありすぎて、悪く言えば不安定な音楽になってしまいます。

また、また100年ほどたったら、作曲家優位の時代がやってくるかもしれません。

そうなると、作曲家が意図していない和音や響きになるコードという手法は、使われなくなるかもしれません。

音楽は、生き物のように変化し、そして進化し続けるのです。

その中で生まれたのが、現在の「コード」というわけですね。

クラシックにはじまる現代的な音楽の歴史は、たかだか1000年ちょっとの歴史しかありません。

和音すら誕生していなかった1000年前から、現代まで急激な進化を遂げたのです。

1000年後の未来の音楽がどんなものになっているか、創造をするだけでもワクワクしますよね。