人生初めての仕事依頼が、作曲する意味を教えてくれました

初めて音楽で仕事をしたのは、確か専門学校の2年生の時、京都の某映像制作所の地方TVのCM音楽制作でした。

2001年頃の話です。

その時のことが、今でも自分の仕事に対する源流となっているので、仕事依頼の経緯と合わせてまとめておきたいと思います。

初めての仕事の経緯

仕事依頼の電話

仕事をもらう一ヶ月くらい前にデモテープを送っていた会社だったのですが、その会社からある日電話がかかってきました。

こんなに早く仕事がくるなんて思ってなかったので、かなりびっくりしました。

そして、電話で具体的な打ち合わせをして、最後に言われた事が、、、

「本日編集した映像送りますから、明日作ってその明後日の朝イチでください。」

え!うそ!映像もらった翌朝に?

制作期間は1日もない!

学生の自分にとって、当時1日で楽曲を仕上げるなんて至難の業でした。

もちろん断れない仕事だったので「大丈夫です!できます!」と反射的に元気よく返事しました。

リアルな心境としては、うれしさ3割、どうしよう7割といったところでしょうか。

結局その後また連絡が来て、

「翌朝、レコーディングをする声優さんがそちらの最寄り駅を通るので、その声優さんに渡してください。」

との事でした。

今から思うと、その声優さんももちろん外注なので、なんと外注使いの荒いところだったのでしょう笑

今の時代だったら、インターネットで簡単にデータのやり取りができるのですが、2001年当時は、まだまだネット速度も今より遥かに遅く、映像をデータで送るなんて到底無理な時代だったことは補足させてくださいね。

制作スタート

そして、翌日のお昼前にビデオテープで映像が届いたので、早速作曲開始。

見たところ、水着の女性が浜辺を楽しそうに走っている映像でした。とある京都の町の、観光推進のTVCMとのことでした。

見た瞬間の印象で、ちょっとラテンっぽい楽しいイメージが湧いたので、そのイメージでつくることを決めました。

とにかく時間がない!!とても迷ってる暇なんてありませんでした。

大学の頃、ラテン系パーカッションは勉強していたのでラテンは割と得意でした。

ラテン系楽器を使って、ちょうど暑苦しくない程度のラテン感をベースにして、ピアノ系でメロディを入れ、最後にシンセで味付けをしました。

何とかその日の夜中には出来上がったので、少し休んで時間をおいて、頭をリフレッシュしつつ微調整をして翌朝までに完全させることができました。

そして翌朝、駅で待ち合わせをした声優さんにCDでデータを無事渡すことができました。

でも、、、担当者さんからどんな感想がくるか怖くて、気が気じゃない数時間を過ごしたことを覚えています。

もう修正できる時間なんてない、、、後がないこの状況は、初めての仕事にとって地獄のような待ち時間でした。

担当者からの感想

そして、その日の午後過ぎくらいに携帯にメールで返信がありました。

「いい感じでした。映像監督も喜んでいます。」

とのメッセージ。

「よかったあぁぁ~!!」

と、高校野球時代以来、6年ぶりの全力ガッツポーズをしました。

人から自分の楽曲を評価してもらえることが、こんなにも快感だなんてこの時はじめて経験することとなりました。

制作費について

こうやって制作がひと段落ついたところで、、、1つ大きな事を忘れていくことに気づきました。

制作費ってどれだけもらえるんだろう???

仕事をもらった喜びと制作の焦りで、お金の事なんて全く頭にありませんでした。

その後、すぐまた担当さんと話をする機会があったので、今回の制作報酬の話をしたら、

「5000円でも大丈夫ですか?」

との返答。

「え!!やすっ」

この当時、地方TVだとしても4~7万くらいの単価はあったはずなので、予想していた額よりもかなり安かったのでちょっとビックリしました笑

でも、初めての仕事だったのでもちろん即答で快諾しました。

そして、次の仕事の映像が送られてきた際、ビデオテープと一緒に5000円札一枚が封筒に入っていました。

「普通は銀行振り込みちがうんかいっ!」

と普通に心の中で突っ込みを入れましたが、とりあえず報酬も手元に届いたので、初めての仕事の一連のやり取りはこれにて完了したのでした。

制作費が発生するという意味とは?

この初めての仕事を通して、今でも心に強く残っているのは、

「自分の楽曲に、1円でも価値をつけてくれる人がいてくれた」

ということに、本当にこの上ない喜びを感じたことです。

この時もらった5000円は、今までしてきた仕事の中でもダントツで安い金額ですが、この5000円を手にした喜びは、今、1000万円もらってもその時の喜びには勝てないと思います。

あの苦しみの日々が、お金という形になって世の中で認めてもらうことができた、、、

それほど初めての制作でもらったお金は自分にとって価値がありました。

その5000円は、一生使わずに取っておきたかったのですが、あまりの生活苦のため、泣く泣くガス料金として支払ってしまいました。

ですが、この時の喜びが今の自分を支えています。

自分の音楽で喜んでくれる人が一人でも増えてくれるように、、、と祈りながら仕事ができたことが、今でも作曲を続けることができている大きな要因となっています。

「仕事はお金じゃない」「仕事はお金によらない」とはこういう意味のことだと、強く実感することができました。