音楽制作者の役割って、作曲・作詞・編曲に分けられています。
その中で、カラオケでも”編曲者”の名前は出ないことがほとんどですし、テレビでも出ないことが良くありますよね><
特にカラオケでは、編曲の部分だけが流れるのに、編曲者の名前がでないなんておかしすぎます!!
このように、日本ではなかなかクローズアップされにくい編曲ですが、実はみなさんが思っている以上にものすごく重要なんです。
今日は「良い編曲とは何か?」についてまとめて行きたいと思います。
目次
編曲の役割
良い編曲の解説の前に、まず、編曲とは何かということをしっかりとイメージしておきましょう!
私の師匠が、このように言っておられました。
「編曲とは、化粧(メイク)のようなもの」
スッピンの女性がメロディだとすると、その素顔をどれだけ美しく魅せることができるかということが編曲です。
時に薄化粧だったり、時に厚化粧だったり、時に原型がないほど作りこんで別人のように仕立て上げることもできます。
youtubeとかでも出ているように、超絶メイク術ってたくさんの閲覧数ですよね笑
顔の右側だけ化粧をして、左側がすっぴんで比較する動画とか、まるで別人ですよね。
このように化粧は、その手法によってどんな女性でも輝かせてくれます。
編曲も、まさにその通りだと思います。
メロディに対して少し薄めの楽器構成で素材の良さを活かすか、ガンガン楽器を厚くして感動の押し売りかのごとく壮麗な曲にするかは、編曲家がどのようにも出来てしまいます。
中には、主旋律はベタでそんなに大したことがないのに、アレンジでカッコイイ名曲になっている楽曲も多数ありますよね笑
このように化粧をイメージしてみると、編曲の役割と、編曲がメロディに対してどれだけ影響を与えるかかわかりやすくなると思います。
つまり、、、ざわちんは”名編曲家”です笑
良い編曲の特徴とは?
①主旋律の個性を引き立たせている
私が最も編曲で大事にしているところです。
メロディの持っている良さを、最大限引き出してあげることが編曲家の使命です。
もし、世間的に名曲と言われている楽曲を、編曲ナシで歌ったらどうなるでしょう?
それはただの「独奏」や「独唱」ですね。
編曲アリで聴く分に比べて、おそらく感動や衝撃はかなり薄いと思います。
これが編曲の力で、主旋律を最大限引き出していきます。
少しあいまいな表現になりましたが、この使命は、この後の全てにかかってきます。
■参考楽曲
- everything/misia
②世界観が見える
これは、全体的に絵が見えたり、1つの独創的なイメージを与えているということです。
楽曲のを聴いていると、まるで映画のように景色が見えたり、聞いているだけで躍動するような楽曲がありますよね。
世界観を与えるには、、アコースティック調にシックにするのか、テクノ調にノリノリにするのか、もしくはオーケストラ調にするのか、大まかなジャンルを決めてあげることが第一歩となります。
時にポピュラー音楽に中央アジア風の音階を入れたりして響きをエスニックにしたり、時にスペイン音階を取りいれてスパニッシュにしたりすると楽曲が見違えることがあります。
世界観は、音階だけでなく、音色によっても大きく変えることができます。
タイタニックのテーマでアイリッシュの楽器を使ったアレンジは世界に衝撃を与えましたね!
編曲は、楽曲にいろんな色付けをしてあげる作業も大きな役割のひとつです。
編曲家は、世界のいたる音楽に精通することが求められます。
■参考楽曲
- My Heart Will Go On/セリーヌ・ディオン
③楽曲の物語が見える
楽曲の物語を作ると言うとちょっとわかりにくいかもしれませんが、これはメリハリをつくることによって、楽曲の長さを調整することです。
もしどんなカッコいい曲でも10分ほどもある曲だったら、きっと「いい曲だけど長いな、、、」って思うはずです。
楽曲は「長い」と感じさせたらそれだけで評価はガタ落ちです。
かといって、2~3分くらいなら評価が固まる前に終わってしまうように思われるかもしれません。
時間と共に徐々に音が厚くなったり、逆にスパッと音を抜いてしまう部分を入れたり、一部リズムを刻んでフック的な部分を入れたり、最後は華々しく盛り上げて躍動感のある物語を作ってあげると人は感動のうちに楽曲を聴き終えることができます。
一番最初より、一番最後に評価が高くなる部分がある人は満足して終わるので、ラスサビは絶対に盛り上げないといけないんですね!
このようにして、楽曲に適切な展開や起伏をつけると、自然に楽曲の長さが決まっていきます。
例えば、アマチュアの人が特に意識せず「A-B-サビ-A-B-サビ-感想-サビ」という王道パターンでに作ったら、とても長く感じて最後まで聞けないのは多いですよね。
プロが作った編曲は、どんなメロディでも最後まで聴くことができると思います。
プロ編曲家なら、楽曲に物語性を与えることができます。
また、「紅蓮の弓矢/Linked Horizon」のように王道メロディながら楽曲構成が全く王道ではないパターンもあります。
しかも、、、クラシック楽曲のようなどんどん展開が大きくなる編曲は、まさに秀逸と言えます!
それだけ楽曲に物語性を与えるには意味があるということですね。
■参考楽曲
- 紅蓮の弓矢/Linked Horizon
- サヨナラノツバサ/中島愛&May’n
④歌いやすい
これは歌モノの条件となります。
良い編曲は、歌っていると次のフレーズをどんどん歌いたくなっていきます。
特にサビ前になると、次のサビはもう、、、ついつい感情が入ってしまって感情があふれ出てしまったりします。
歌手が歌いたくなるように音楽にフックを入れてあげましょう。
これは③の物語を与えると言うことに似ていますね。
どんなに音数が増えても、メロディを歌うシンガーの邪魔をしてはいけません。
「この曲歌いにくいな、、、」って思われたら、基本はダメな編曲であることが多いです。
僕も歌手経験があるのでわかりますが、本当に良い編曲は歌い始めやサビにカウントが入っているかのごとくついつい吸い込まれるように歌いたくなってしまいますよ。
良い編曲のさまざまな技法
では、良い編曲を作る際に、考えておくべきことをまとめておきましょう。
これは、現場で20年編曲をしてきた私自身の経験によるものです。
①編曲の際に考えること
まず、良い編曲のためには、ハーモニーとリズムを考えなくてはなりません。
つまり、音楽の三大要素「メロディ」「和声」「リズム」ですね。
メロディに、ハーモニーとリズムをつけて絶妙に合わさった時、最高の盛り上げが生まれます。
この2つは、どちらから考えても大丈夫ですし、同時に作って行っても大丈夫です。
私は、コード進行をガチガチに作ってから作曲をすることも多いので、私の音楽はハーモニー主体の音楽が多いです。
また、リミックスや別アレンジバージョンは、メロディを変えることができないので、このハーモニーとリズムパーを変えていく作業と考えてもらってOKです。
ハーモニー
メロディの感動する部分、ゾクゾクする部分を増強してあげるのが、このハーモニーです。
シンプルなメロディでも、コード進行がカッコ良ければ全く別のように聞かせることができます。
ここ最近の流行では、一時転調のコードをうまく当てはめていくとめちゃめちゃかっこよく聞かせることができるようになります。
また、トニックで始まるサビを、あえてサブドミナントにしてみたりすると緊張感が生まれてカッコ良くなったりもしますよ。
これによってメロディの表示用が大きく変わります。
リズム
リズムで、まず最初に決めなければならないのは”テンポ”です。
テンポによって楽曲の表情は大きく変わり、アップテンポの楽曲をバラード調にしたら名曲が生まれたと言う話はよくあります。
テンポが決まった後、そのメロディに合うリズムを決めるのですが、リズムって何かというと、1つの小節の中でどの部分にアクセントをつけるかということです。
アクセントのつけ方によって、曲に波が生まれ、その波が躍動感へとつながっていきます。
Queenの「We Will Rock You」なんて、ハーモニーパートがなく、リズムとメロディだけで1コーラスが成立してしまっているほどメロディとリズムがかみ合った名曲です。
そのメロディが一番輝けるリズムを見つけてあげましょう!
■参考楽曲
- We Will Rock You/Queen
カウンターメロディ
ここでもう1つ編曲で大事な要素があって、「カウンターメロディ」も忘れてはいけません。
私が教えている学生は、カウンターメロディが苦手な人は多いです。
主旋律がメインであることを前提に、もう1つの旋律が楽曲の中を走り抜けます。
葉加瀬太郎がいろんなアーティストとコラボレーションしている際に、絶妙なカウンターメロディを入れてくれる動画がとても参考になりますよ。
ハーモニーとリズムを付けて、カッコいい楽曲を作れる人はたくさんいますが、さらにカウンターメロディを多用することによってさらに楽曲は締まっていきます。
最近のポップスでは、ストリングスでよくカウンターを作ることが見られますよね。
ハーモニーとリズムをしっかりと縫い合わせる”糸”のような存在であるように感じます。
主旋律の存在感をしっかりと守りつつ、カウンターメロディーがカッコいいとキュンってしてしまいます笑
■参考楽曲
- ドラマチック/Yuki
- 葉加瀬太郎のアーティストコラボ編曲
②音の厚みや、楽器構成を考える
音の厚みも重要な要素です。
シンプルな楽曲構成にするか、バックに何人もつけて大掛かりな楽曲にするかを最初に考えなければなりません。
もっともシンプルなパターンは、ギターやピアノなどによる弾き語りですね。
特にピアノだけの弾き語りの名曲は多く、必ずしも複雑でたくさんの編成の楽曲が良いアレンジであるとは言えません。
その楽曲の良いところを引き出す。
これが編曲の最も大事なところです。
■参考楽曲(厚い)
- やさしさで溢れるように/JUJU
■参考楽曲(やや薄い)
- swallowtail Butterfly ~あいのうた~/Yen Town Band
③前奏や間奏を盛り上げる
楽曲において前奏はものすごく重要です。
TV番組では、最初から会場が盛り上がるように”前説”がしっかりと空気を作ってくれますよね。
編曲も同じように、前奏が最初のAメロをどのように聴かせるか空気をつくる役割を持っています。
静かなAメロにしたい時はあえて前奏を豪華にしてメリハリを持たせたり、もしくは静かなままゆっくりAメロに入っていったり、時にはAメロからガンガン盛り上げるために前奏は短めにするとか、、、その手法は様々です。
前奏にもメロディがあって、それだけで名曲になっている楽曲もあったりします。
野球で言えば1番バッターのように重要な役割があるので、あなたの楽曲にどんな前奏をつけるのか、しっかり考えてみてくださいね。
また、間奏も同じように壮大に盛り上げるのか、あえて薄くするのか、もしくはその両方を使って楽曲に大きな物語を与えるのか、これも編曲家の腕の見せ所です。
■参考楽曲(前奏)
- PRIDE オープニングテーマ
■参考楽曲(間奏)
- 君の知らない物語/supercell
まとめ
自分が編曲についてこだわっているところを上げていきましたが、やはり音を聴かず言葉だけで伝えるのは難しいですね笑
ですが今回は、自分の中でも漠然と思っていた良い編曲というものが言葉にできる、良い機会となりました。
もしあなたの編曲に、ほんの少しでもプラスになれれば幸いです。