平均律と純正律の違いってわかりますか?
名前はよく聞きますが、実際にはどんな違いがあるのか、なぜどちらも誕生したのかは意外に知られていません。
今回は、このナゾについて切り込んでいきたいと思います。
平均律と純正律
純正律とは?
純正律とは、音の振動数が完全な整数比によって生み出された音階です。
音音と混ざり合っても倍音のうねりが発生しない、キレイに混ざり合うチューニング方法です。
音程差 | 比率 | |
完全1度 | 1 | 1 |
長3度 | 4 | 5 |
完全5度 | 2 | 3 |
長6度 | 6 | 5 |
完全8度 | 1 | 2 |
なぜ平均律が生まれたの?
”平均律”は、12音を均等に分割し、それぞれの音の間が全く同じチューニング法です。
現在となってはこれはごく普通に使われていますが、平均律がなぜ生まれたのか、必要だったのかを簡単に説明ます。
まず、純正律についてもう少し詳しく説明していきますね。
1本の弦をピーンと張って音を鳴らすと、ギターのように音が鳴ります。
そして、その弦の長さをピッタリ3分の2にすると5度上の音が鳴ります。
つまり、ハ長調で言えば「ド」と「ソ」の関係ですね。
そして「ソ」から見ると「レ」になります。
そして「レ」から見ると「ラ」になります。
そしてこのまま、この転調(?)を12回繰り返すと最後は「ファ」から見た「ド」なり、最初の「ド」に戻ってきます。
ですがここで問題があります。
このように戻ってきた「ド」の音と、最初の「ド」の音を比べてみると、、、
なんと戻ってきた「ド」の方が少し高くなっているんです。
音で言うと、23.46セントも高くなっています。
つまり、完全に協和する5度の音程って、2セントずつズレているということになりますね(23.46セント÷12回の転調)。
単純な整数比で表すことによって生み出された「ドレミファソラシド」音階は、音を均等に12音に分割したものとズレていたんです。
これは良くない、、、と考えた昔のエラい人たちは、オクターブ上が完全8度になるということは音楽上絶対に変えられないということで、完全五度を2セント低くするというチューニング方法にせざるを得なくなりました。
つまり、オクターブを完全に調和させることによって生まれるズレを、均等に振り分けましょうということで生まれたものが平均律です。
これはもう、完全に混ざり合う音を”捨てた”ということになりますね。
つまり、完璧な音楽からの「妥協」です。
なので、平均律とは、純正律ができた後に誕生したチューニング方法です。
ですが、現代の音楽はほとんどが平均律で作られています。
現代人の耳は、これほど厳密には聞き分けができなくなっているということなのかもしれませんね。
では、下記が実際に純正律と平均律はどのくらいズレているかという一覧です。
音階 | 純正律 | 平均律 |
完全1度 | 完全に混ざる | 同じ |
長3度 | 完全に混ざる | 14セント高い |
完全5度 | 完全に混ざる | 2セント低い |
長6度 | 完全に混ざる | 16セント高い |
完全8度 | 完全に混ざる | 同じ |
※=セントとは、1オクターブを1200に分割した数値
このように、完全に混ざり合う音程をあきらめ、最も音楽的に便利な手法として発展しました。
平均律と純正律のメリット・デメリット
平均律のメリット
どのキーへも転調ができる
平均律は、12音が均等の幅になるので、どの調で弾いても同じ音程の幅となります。
つまり、どの調へも簡単に転調できるという利点があります。
平均律のデメリット
音がきれいに混ざり合わない
これだけ平均律が一般的に使われるようになっていながら、平均律チューニングのピアノやギターなどでは、理論上は本当に完全に混ざり合うことはありません。
多少は目をつぶっていられるレベルだったので、利便性を優先したのですね。
純正律のメリット
和音が美しく響く
音の振動は単純な整数比になればなるほど最も美しく響きます。
この整数比に、より美しい和音が得られることができます。
聴き比べると、確かに違うと気づく人は多いと思います。
純正律のデメリット
ギターやピアノではコードが美しく響かない
これは不思議なのですが、ドミナント7thなどでは、純正律より平均律の方がよりドミナントとして響くことがあります。
これは、おそらく平均律を元に機能和声が作られたからではないか、、、と推測しているのですが、機能和声と純正律は完全に親和性が無いとも言えることだと思います。
このあたりは不思議で仕方がありません。
転調ができない
例えば、ピアノをCメジャーの純正律によってチューニングしたとします。
Cを基準として完全な整数比によって生み出されたのが純正律なので、その基準となる音がCからE等に変われば、Eを基準とした整数比になることは絶対にありませんね。
なので、アナログ的なピアノチューニングは、純正律の転調がとても難しい楽器といえます。
まとめ
このように、平均律とは純正律の問題を解決すべく誕生しました。
完璧から少し遠のいてしまいましたが、利便性を優先した結果、現代のような転調がバンバン起きる、転調が気持ちい音楽が生み出されたのかもしれません。
もし過去の先祖様たちが、純正律を選んでいたら、現代に残る音楽は今と全く違ったものになっていたことでしょう。
これも、音楽史を勉強する上での壮大なロマンを感じずにはいられません。
今後も、人類は平均律と共に音楽が発展していくことでしょう。
コメント
純正調で完全5度上へを12回やって元の音から24セントズレる!というのはびっくりしました.そうすると「ドからそれを12回やった7オクターブ上のドが24セントずれている」はずだから,周波数で考えると,完全五度は周波数1.5倍→129.7463378…倍→7octで2^7=128より高い!・・・ということですよね?もしもそれを完全4度でやると「1.333^12=31.56929…,5oct上なので2^5=32」あれ今度は低い・・・これはどうしてなのかわからなくなりました.windows10の「電卓」の有効数字のせい?
24セントじゃなく23.46セント、丸めると23セントだよね、ピタゴラスコンマは。
機能和声が平均律を前提につくられた?
・・・ちょっと不勉強過ぎませんか。
ラモーとリーマンくらい読みなよ。
ドミナント7thはもともとモンテヴェルディが使ったころは協和音だけどさ。
>さばねこさん
完全四度の12乗は23.46セント低くなる。
なぜって、完全五度の12乗と、完全四度の12乗をかけるとちょうど4096倍で12オクターブに等しくなるからね。
ご指摘ありがとうございます。
確かにそうですね、2セント×12回でわかりやすく書いたつもりでした。
正確に23.46セントに修正させていただきました。
「機能和声が平均律を前提につくられた?」
誤解に取られる可能性がある書き方で失礼いたしました。
ご指摘の通り、すべての機能和声ではなく、まだ未完成であった一部の機能和声においてですね。